実際の賠償裁判判例
実際の賠償裁判判例
適切な食事介助を怠った
くも膜下出血の手術を受け入院していた男性(当時59歳)が手術の5日後に出た病院食を喉に詰まらせ窒息したことから後遺症を患った。患者側は医師と看護師らに食事の経口摂取の判断ミス、適切な食事介助を怠ったとして損害賠償を求めた。結果として、医師の過失は認められなかったものの、看護師の食事介助は適切ではなかったと認められ4,800万円で和解が成立した。
腹部CT検査をすべきであったとする注意義務違反が認められた
夜に腹痛を訴え救急車搬送で救急外来を受診した男性(当時76歳)は医師の診察を受けた。この時の医師は腹部の触診にも、 各種検査の結果にも腹部仰臥位X線画像にも所見が無かったため点滴を投与して帰宅許可した。が、あまりに苦しそうな男性の様子から家族の申し出で一晩救急外来で過ごし翌朝、消化器内科と外科を受診。腹部単純CT検査の結果、消化管穿孔と診断され抗菌薬等の治療を受けたが、翌日に死亡。
救急搬送時の医師に対し,腹部CT検査を行うべきであったと約4000万円の損害賠償が求められ、裁判所はCT検査をすべきであったとし,1590万円の賠償請求が認められた。
第三子までの一連の医療行為における他の医療機関の報告の信頼の是非
本当は血液型がRh(-)であった母親の母子手帳に、開業医が臨床病理センターの誤報告によってRh(+)と記載してしまったことにより、Rh血液型不適合妊娠への対応が取られなかった。この結果新生児溶血性疾患が生じてしまい、二人目の子は核黄疸を発症し脳性麻痺となり、三人目は胎児全身水腫症で死亡してしまった。臨床病理センターとこの開業医に5727万円の支払い命令が下った。
病状の適切な説明と検査を勧める義務を怠った
健康診断を受けた男性で肺の左上葉に浸潤影が見つかったにも拘わらず肺がんに罹っているかもしれないことを知らされず、5年半後に肺腺がんステージ4と診断されその診断の1年後に死亡した。肺がんと確定するための診断に必要な検査をせず肺がんが見落とされたとしてこの男性の遺族が診察した医師に損害賠償を請求した。裁判所は医師が男性ががんに罹っている可能性を適切に説明し、精密検査を受けるように勧める義務を怠ったとして約4200万円の支払い命令をくだした。
遺物遺残
乳癌の転移で末期癌の状態で呼吸困難に陥った女性(死亡時53歳)が緊急搬送され、その後すぐに癌性心膜炎による心タンポナーデによる心肺停止状態となった。この女性に心膜穿刺術が施されたがその際、針(内針)が心膜腔から除去され忘れており、この針が心臓を穿孔したことで出血し外傷性心タンポナーデを発症し女性が死亡した。この女性はわずかな余命しか期待できなかったことから慰謝料800万円が認められた。
大動脈損傷の過失
当時75歳の女性が腰椎の圧迫骨折等の治療のために腰椎後側方固定術を受けた。だがその手術中から多量の出血が起こり、手術後に他の病院へ移されたが多臓器不全で死亡した。遺族らは腹部大動脈を損傷した過失があるとして手術をした病院に損害賠償を求めた。審理の結果、医師の過失が認められ約3,500万円の支払いが命じられた。